大学時代の二作
大学時代には二作書きましたが、僕は「自称作家」とか「自称芸術家」っていうのが嫌で、誰にも見せずに書いてました。そのあと小説家になろうと思って、「日蝕」を留年して書いていたんです。京大の法学部は半分くらい留年するんですが、たいていその理由は司法試験の受験。僕だけが執筆のためでした。小説書いてることは人に言ってなかったので、「ダメじゃないか」とか説教してくる友達もいて(笑)。ただわりと呑気な性格なんで、1年くらいいいやと思っていました。(マイナビ)
平野啓一郎が先に書き始めたのは「一月物語」だったそうです。デビュー作としてのインパクトを考え、「日蝕」を先に発表したとのこと。
「日蝕」の文体を獲得
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加藤剛(朗読)/名作を聴く(1)〜森鴎外
僕自身もですね、森鴎外
の史伝ものとかは努力する部分があるんですよね、やっぱり。でも、読者として能動的に参加していこうという意識があって読むんですけど、読むとそれなりに得るものがあるような気がします。まあ、古典的傑作といわれるもので、多かれ少なかれ退屈じゃない作品って言うのはないと思うんですよ。じゃあ、その退屈な部分が無くてもいいかというと、そうでもないんです。「日蝕」の場合ですと、最初の出だしの部分は中世の思想史のおさらいみたいなものでなかなか読むのが大変だという方がいらっしゃいますが、あそこの部分がないと小説として成り立たないんです。作者の希望としてはああいう部分もちゃんと読んでもらいたいと思いますけど。(週刊実話)
名作でも退屈な箇所はあります。でもそうした部分も読んでこそ本当に全体が理解できるわけですね。積極的に物語を楽しみたい方には、耳で聴くCDもおすすめです。けっこうハマります。平野啓一郎も「日蝕」の文体を獲得する際には鴎外のカセットブックを聴き込んだそうです。
トマス・アクィナス「神学大全」
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神学大全(16)
トマス・アクィナス
トマス・アクィナスの心の哲学
大学3年の夏休み、平野啓一郎は「日蝕」執筆のためにトマス・アクィナス「神学大全」に一通り目を通したそうです。かなり精読した部分もあるとのこと。目にすれば驚くと思いますが、質量ともにとんでもない大著です。
ひきこもり
「日蝕」は二十一歳の冬から二十二歳の冬にかけて、一年間かけました。史料調べに半年、執筆に半年。そして「日蝕」ができた時、作品に対する自負みたいなのはありましたから、投稿したわけです。(文芸春秋)
同級生達が就職活動をしている間、平野啓一郎は大学を休学し、自室にひきこもって「日蝕」の執筆をしていたそうです。自分の適性を見極め、「この世界(業界)なら自分はこの辺りまでいける」といったことを思ったとのこと。熱い創作意欲と冷静な判断力を併せ持っていたのでしょう。
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