幻のエッセイ

STUDIO VOICE 1999年2月号(現在では入手困難)には、未だどこにも収録されていない幻のエッセイが載っています。ここに書かれている『「シュールレアリスト宣言」のようなマニフェスト』ですね。一月物語の文体を想わせる美文調で書かれたもので、読み応えのある貴重なエッセイです。
日蝕の韓国語訳
1999年に韓国で翻訳出版された「日蝕」は、忽ち3万部以上売れ、その翻訳には野間文芸翻訳賞が与えられました。1400冊以上の対象から選ばれたそう。翻訳者はヤン・ユンオク(Yang, Yoon-Ok)。出版社は文学トンネ社(MUNHAKDONGNE PUBLISHING.CO)。平野啓一郎は講演とサイン会のために訪韓した際、熱心なファンたち(主に女学生)にタクシーで追っかけられたそうです(笑)。
マルタ・アルゲリッチが好き
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Martha Argerich『PIANO RECITAL - CONCERTGEBOUW 1978/9』
好きな演奏家は、最近はピアニストのマルタ・アルゲリッチ
ですね。女を超越しているっていうか。好きですね、すごく。(週刊実話)
一月物語について
今回は現地に行ってかなり取材をして、あの辺の土地が持つ独特の雰囲気を実感したところもありますし、廃仏棄釈がはげしく行われた地域であり、又、日本の原郷ともいうべき熊野に近いこともあって地霊の力が強いといわれることで十津川村を選んだということはあります。
全体を貫く世界観としては、仏教的な「縁起の空性」といった問題をモティーフとして採用しています。それからほんの少しですが、現実に起こった出来事が神話の世界に退いていく課程みたいなものも、今回書きましたね。
「日蝕」との対比で言えば、「日蝕」の場合は感動の焦点を、あの”空白の部分”に持って来て、それに向けて言葉が連動していく形にしているのですが、「一月物語」の場合はテクストが終わった後に感動の焦点を持ってきている。読み終わった後に、何か蜃気楼を見たときのような感じを受けるようにしたかったんですね。
最初の象徴的な夕焼けの場面から最後の朝の場面に挟まれた、言わばひとつの長い夜の物語になっています。主人公は最初の時点で既に山に迷い込んでいて、近代的で直線的な時間というものから外れてしまっている、言わば脱歴史的・原初的な時間の中でテクストが展開されるのです。(週刊読書人)
擬古文ではない
「一月物語」も「日蝕」も、厳密に言えば擬古文には全くなっていないし、意識としては、やはり日本語の新しい可能性を考えています。その時、過去に日本語が蓄積して来たものを、現時点で再検討し直す作業が重要だと思うんです。
フォルムを保持する感覚とフォルムを壊して何かを切り開いていこうとする感覚、常に両方に足を掛けて、微妙なバランスを取っていく必要があると思うんです。実験のレベルで言えば、ひたすら破壊することで得られるものもあると思いますが、意識というのは基本的に洗練を求めるものだと思うんですね。(週刊読書人)
一月物語
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一月物語
美しい小説です。物語の骨子がしっかりと作品を支えています。「高野聖明治三十年、奈良県十津川村。神経衰弱の気鬱を逃れ、独り山中をさまよう青年詩人・真拆は、老僧に蛇毒から救われ、山寺に逗留する。俗世から隔絶された奇妙な時空の中で、真拆はいつしか現実と夢界の裂け目に迷い込み、運命の女と出逢った。それは己の命を賭けることでしか成就しない愛、だが、刹那に失われる運命の愛だった…。古典的風格さえ漂う端麗な筆致で描かれた聖悲劇。(BOOKデータベース)
フランソワ・ヴィヨン
今回の騒ぎの中で「日蝕」を読み、なお飽き足らずに鴎外
を読むようになり、ヴィヨン
を読むようになるのであれば、それはそれで意味のあることだと思います(東京新聞)。
実にクールな平野啓一郎です。芥川賞受賞時の取材攻勢の渦中のコメントですからね(笑)。
中田英寿? 芥川賞受賞時の平野啓一郎
芥川賞受賞時の平野啓一郎です。この映像だとちょっと変な人に見えますが(笑)、過熱するメディアの取材攻勢の渦中でもクールな様子が「文学界の中田英寿」といわれました。それにしても当時から比べると現在はずいぶん垢抜けたものですね。
バフォメット
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ピエール・クロソウスキー
「日蝕」執筆にあたって平野啓一郎が影響を認めた作品のひとつが、ピエール・クロソウスキーの「バフォメット」です。
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ウンベルト・エーコ
の「薔薇の名前」の影響を指摘されることが多いのですが、あまり意識しませんでした。両者の間には表面的な関わりがあるに過ぎません(ダ・ヴィンチ)
芥川賞受賞当時「日蝕」は、あの世界的ベストセラー「薔薇の名前」に似ているといわれました。そうした風評はともかく「薔薇の名前」は読んで良かったと心の底から思える面白い小説です。至福の時を味わえます。
マニフェスト
芥川賞受賞直後の平野啓一郎のコメントです。すでに当時から自分の全集を書くつもりで作品を構想していたそうですから新人離れしています。「日蝕」という小説が、今後の創作活動において、一個の具体的なマニフェストの役割を果たしてくれると考えています。いわば、門のようなものです。そして、門というものが、結局奥に控えるものの存在によってこそ意味を持つものであるように、私もまた、この「日蝕」の先に、数多の作品世界を構築すべく、今後今以上に創作に励んでゆきたいと思っています。(読売新聞)
日蝕
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日蝕
「日蝕」は、平野啓一郎のデビュー作品であり、芥川賞を史上最年少で獲得してベストセラーになりました。当時の芥川賞審査員の選評は、河野多恵子現代が喪失した「聖性」に文学はどこまで肉薄できるのか。舞台は異端信仰の嵐が吹き荒れる十五世紀末フランス。賢者の石の創生を目指す錬金術師との出会いが、神学僧を異界に導く。洞窟に潜む両性具有者、魔女焚刑の只中に生じた秘蹟、めくるめく霊肉一致の瞬間。華麗な文体と壮大な文学的探求で「三島由紀夫
の再来」と評され、芥川賞を史上最年少で獲得した記念碑的デビュー作品。 (BOOKデータベース)
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